「ルルーシュ、どこにも行かないでね?」
言われたにゃんこはしばし目を点にしていた。
「お願いだよ。」念を押されるに至っては‥‥、仔猫は不機嫌をかくさなかった。
「にあ。」行くのはおまえだ。オレじゃなぃ。
そう、スザクにはこのたび、お出かけの命令が出たのである。キャメロットと共に移動。立派な海外出張だ。
「ああ、そうか、そうだね。」
茫洋とした口調でスザクは返す。
「にあ。」安心しろ。おまえがいないからって、ここにいて困るほどのこともないだろう。
言い捨てたルルーシュは、ついっと、そっぽを向いた。
「‥‥‥‥。」
スザクとて、わかっているのである。
ルルーシュのこの態度は決して「この無防備な背中を撫でても良い」、と言う意味ではないということは。
単に「話は終わった」と言う意思表示なのであるが‥‥。
でも。
ルルーシュは知らないのだ。この背中が、この毛並みが、どれほどキモチがよいのか。
ちっさなからだは軽くて、抱き上げると不安になるけど。でも、抱え込むことができれば暖かくて、鼓動が伝わってきて、‥‥‥それがスザクをどれほどシアワセにしているか。
「にあ。」やめろ、暑苦しい。
ルルーシュの鳴き声。だけど、暴れたり、爪を立てたりしない。‥‥だからスザクはほんの少し甘えてみる。
行き先は戦地で。
きっと君に見せられるようなものは何もないけど。
‥‥‥だけど。
「一緒にいこ?」
「にあ。」バカモノ。おまえはシゴトに行くんだろうが。
「‥‥うん、オシゴト。‥‥でも、一緒に来て?」
誰かにルルーシュを預けるなんて出来ないよ。スザクは言う。
君を一人で残していくのも嫌だけど。
だから、おねがい、おねがい。
スザクは繰り返す。小さなにゃんこが納得するまで。