スニーカー文庫生徒会事件簿R2の設定をベースにしています。
ルルーシュにとってはロロは会長の遠縁で学園に通っている知らない子です。
ロロもわりきって?ナナリーのトモダチでいるコトにしています。
更に、余計な設定があります。
ルルーシュはせっせと黒の騎士団に通ってますが、さしたる成果をあげていないようです。
ついでに言えばクロヴィス殿下も御健在で、特派所属のスザクさんの出世の予定はありません。(‥‥えええ?)
※※※※※※
アッシュフォード学園高等部三年生、ルルーシュ・ランペルージ(17歳)には今、気がかりなことが一つある。
他でもない、可愛い妹のナナリー(同校1年・在籍中)のことだ。それはそれは目に入れても痛くないほど可愛い妹である。
そのけなげで可愛い妹の笑顔が、いささか曇りがちなのだ。
笑ってはくれる。ついでに、いつものように、余計なことも言う。勿論賢い妹のことだ、場が悪くなるほど塞いでいるわけではない。
ただ、ルルーシュの目には彼女の様子が、何か心に引っかかっているものがある‥‥という風情に見えるのだ。
それとなく、スザクに尋ね、ミレイに尋ねてみたが、どちらもそれに気がついているわけではなかった。
確かに自分の気にしすぎかもしれない。そうは思う、思うのだが‥‥なんとなく気になるのだ。
咲世子にも話をしてみた。「心がけておきますね。」と、笑われた。
「全く心配性だね、ルルーシュは。」
とまで、スザクに言われてカチンときたなどということもあったが。
「ロロには訊かないの?」
と何故か上から目線で言われたことも実に業腹であった。
確かにアレは同じクラスだからナナリーがそばについてやっている事が多いようだが、何故自分の妹のことなのにロロに訊かなきゃならんのだ。全くもって許しがたい言い草だ。
折しも、もうすぐナナリーの誕生日である。今年のプレゼントはアクセサリーとオルゴールのケースにした。
もう高校生だし、身を飾るものはいくらあってもいいだろう。なんと言っても、何を身につけてもナナリーはかわいいし。
今年は平日だし派手なことはできないが、放課後をつかってケーキぐらいは、と思っている。
‥‥そんな兄である。
その前週。夕暮れ時の生徒会室。珍しくロロと二人になった。ナナリーは通院日で、咲世子が一緒だ。
「次の月曜日の放課後は、ナナリーの誕生日のお祝いをしたい。‥‥、よろしく。」
サプライズが仕込んであるわけでなく、特別に言っておかねばならぬことがあるわけでもなかった。ただ、ロロにはナナリーの誕生日は初めてだったから、一応言っておいただけだった。大体ロロは、基本的に邪魔になるようなことはしない。と言うか前に出てくることはほとんどない。
そういえば、会長が「よっぽどロロのほうが悩んでるカオをしているような気がするんだけど。」と言っていたが。
いつだって、つんむり黙っている。ネクラな方なのだ。コイツは。
コレが少々溜息をついたって、それが何か珍しいとはルルーシュには思えないのだが。
「センパイ‥‥。あの‥‥。ボク‥‥。」
日程的に何か不都合でもあるのだろうか。意を決したように自分にむいたロロの瞳にきょとんとルルーシュは首を傾げた。
「‥‥ナナリーに、何をプレゼントしたらいいのか、わからなくて。」
「オマエは、プレゼントを用意する必要はないだろう?」
特に考えることもなく、返事をしていた。
そういうものは兄である自分が用意しているんだから、別に他の連中は何も用意してなくていいのだ。‥‥ちなみにルルーシュはホンキで言っている。
ロロは目を丸くしていた。
「プレゼントなんて気持ちなんだ。お祝いをしたいという気持ちさえあれば、それで十分なんだ。」
「でも、‥‥ボク、なにか‥‥してあげたくって。」
うじうじと、ロロが食い下がる。 まさか泣くのか?と一瞬思ったが泣きはしなかった。
なるほど、コイツの悩みとはそれか。‥‥アホ臭い。当のナナリーを心配させるほど悩むな。どうかしているぞ、まったく。
とりあえず、ナナリーの誕生日を覚えていて祝おうという気持ちがロロにはある。‥‥‥それは評価してやらなくてはならないだろう。ルルーシュは結論付けた。軍の勤務に休みを申請することを忘れていたから当日参加できないかもしれないなどと言い出したスザクなどよりよっぽどマシだろう。
「誕生日は大事なんです。」
「まあ、年に一度しかないからな。」
頬杖を付いたままルルーシュはロロのカオを見上げた。
「じゃあ、当日のテーブルの花をオマエに任せよう。昼休みに屋上の花を摘んできてくれ。」
きっと花を咲かせている秋桜を思い浮かべながら言う。
「はいっ!」
びっくりするほど明るい返事だった。
当日。ルルーシュはキッチンでケーキの面倒を見ていた。午後の授業は予定通りエスケープである。
少し大きめのスポンジを焼いたので、ろうそくも年の数だけ立てることができるはずだ。
その分、飾り付けはシンプルにしてある。
ピザが届いた。
一枚だけ先に自室に運ぶ。
「この秋のスペシャルだ。頼むから邪魔をするなよ?」
と、C.C.に言った。部屋から出ないでくれればそれだけでいいのだ。放っておけばお相伴に来かねないのだから、先に渡しておくに限る。
「失礼な奴だな。」
と返事があったが、特に気にしない事にした。
内線でロロを呼びつけケーキもピザも運ぶのを手伝ってもらった。
テーブルの花は用意しておいてやった花瓶に良く似合っていた。白からピンク、色とりどりのコスモスが揺れるように広がっている。
「きれいに生ける事ができたな。」
別に、褒めたつもりはないのだが。そのルルーシュの言葉に、
「ナナリーが教えてくれたんです。」
そう返事がきて、表情がこわばった。どうやら二人で昼休みに生けたらしかった。
ああ、何故気がつかなかったんだろう、ナナリーは親切な良い子なんだから。コイツが余計なことを言えば放っておけないに決まっているのに。そんなことのために昼休みを削ってまで。昼食はゆっくり時間をかけて食べられるように、と配慮してわざわざ一緒に食べたりはしていないというのに。兄は大層後悔した。ちなみにロロの分までナナリーのランチボックスに入っているのはそのほうが何かと都合がいいから、と納得した上でのコトであって他意はない。
「おにいさま。」
ああ、今日ばかりはナナリーの声も嬉しそうだ。
「ロロの誕生日も今日なんです。ろうそくは二人で消していいですか?」
「それは知らなかったな。」
ナナリーボクは別に‥‥などと、馴れ馴れしくもナナリーの肩に手を置こうとしたロロを黙らせる。
「オマエはこっちだ。」
ぐっとその華奢な体を捕まえる。このあとローソクを消す、と言うことを考えれば、向かい合わせ、というわけにはいかないから、二人並んでケーキに向かえるように机の端に手を置かせる。祝われる立場に立たされて照れているのだろう、ロロの頬がピンクに染まった。
さ、準備はいいかーい。リヴァルがライターを準備している。会長が高らかに歌いだす。そもそも、会長の遠縁なんだからコイツの誕生日ぐらい知っててやってもよさそうなものなんだが。頓着してないあたり、困ったものだ。
シャーリーカレンと咲世子とスザク、あわせてケーキは10等分。少しばかりややこしいケーキカットはニーナの役だ。
まあ、スザクは今日は居ないのだから、アイツの分はなくてもいいのだが。内心ぽつっとルルーシュは毒を吐く。
それでも楽しい、ひとときだった。
窓の外で、「ふぎゃっ」となんとも表現しがたい音がした。
この日に限ってなぜか自室ではなく、ダイニングでゆっくり読書をしていたルルーシュは、重い腰をあげる。
案の定、そこにスザクが居た。
「助けて‥‥くれないかな?」
うるるっと瞳が見上げてくる。
「‥‥知らん。オマエが余計なことをしたんだろう。猫が夜行性で何が悪い。」
多少機嫌が悪いのは、この際大目に見てもらおう。
「で、ナナリーにコレを‥‥。」
小さな紙包みをスザクが取り出した。‥‥おそるおそる。ルルーシュはなんとなく天井を見た。ポケットの中で少々カタチが潰れているのがいかにもスザクだ。
「許しがたいが、‥‥今日はたまたままだ起きているし。そういうものは自分で渡せ。」
ついてこい、と背を向ける。
「はいっ。」
この間、アイツもこうだったかな?ルルーシュの記憶を誰かの影がよぎる。
「ナナリー。スザクが来たよ。‥‥大遅刻だ、怒っていい。」
くすっとナナリーが笑う。ああ本当に、ここしばらくの気鬱は自分の気のせいだったに違いない。
「ありがとうございます。」
ナナリーはまだ椅子に座っている。本当はもう、寝る時間なのだけど今日は着替えも後にしてゆっくりラジオを聞いていた。
スザクがそばに膝をついてゆっくりナナリーに話し掛ける。ルルーシュは扉に寄りかかってそれを眺める。ころあいを見てつまみ出して、ナナリーを眠らせてあげる。それがルルーシュにとって今、一番大事なシゴト。
可愛く弾むナナリーの声。
「‥‥はい、いっしょにお祝いを考えるお約束をしたんです!」
小さな声でもナナリーの声は良く聞こえるような気がする。
でも何の話なのかは詮索しないことにした。せっかくこんなに元気になっているのだから。
きっと今夜はこのまま良く眠れるだろうから。
予定通り、スザクを部屋から放り出した。一人で行ってろ、と言ったキッチンにお茶とケーキが用意して置いてあるのはたまたまだ。
「そろそろ寝ないとね、ナナリー。」
はい、と素直にナナリーは頷いた。ルルーシュのカオを見て嬉しそうに微笑む。ああ、まさに天使だ。この天使の笑顔が、兄に言えない事を抱えているなんて、そんなはずはない。
その夜、スザクが言った。
「君がみんなを元気にしてくれるから、‥‥だからナナリーが元気になれるんだよ。」
大体コイツの言うことはよく分からないことが多い。唐突で支離滅裂なのだ。
意味ありげな微笑み。
「仲間ができるって、特別だからさ。‥‥僕も負けてられないなぁ‥‥。」
何の話だ、まったく。そう思いながらルルーシュは目を閉じる。
「約束かあ‥‥。いいなぁ。」
そういえば。魔女は何か言ってたかな、とルルーシュがふっと気をそらした。
「ルルーシュ‥、君には何がいいのかな‥?」
スザクの言葉は子守唄のように、空気に溶けた。
INDEX
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もう10月で4月から半年も経っているのに全く進展してない状態‥‥。
このままじゃ会長が卒業しちゃう!
できたら、この世界のアッシュフォード学園の近所には磯野さんちがあるってことで。
ロロは永遠の16歳で。兄さんの卒業後の進路におびえていたりしなくていい、ってことで
お願いします‥‥。(って、それではずっと、進展しないじゃん!)